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Vol8 後継者は経営革新のシナリオを描くべし(自身の成長回路編)

Vol.8

後継者は経営革新のシナリオを描くべし(自身の成長回路編)

川路 隆志
株式会社えんのした/メイツ中国契約講師

はじめに

前回(第3回)は、「後継者は経営革新のシナリオを描くべし(会社の成長回路編)」と題して、事業承継の成功のために後継者が「会社の成長回路」をどう回していくべきか?についてご紹介いたしました。第4回(最終回)は、「後継者は経営革新のシナリオを描くべし(自身の成長回路編)」と題し、事業承継の成功のために後継者が「自身の成長回路」をどう回していくべきか?そのヒントをご紹介いたします。

「自身の成長回路」とは何か?

後継者が「会社の(新しい)成長回路」を回し始めると同時にやるべきことは、後継者が「自身の成長回路を回す」ことです。理由は、会社は経営者の器以上に成長することはできないからです。以下ではどのような視点で後継者が自身の成長回路を回していけば良いのかをご紹介します。

私が理事として関わっている 一般社団法人軍師アカデミーでは、後継者が取り組むべき(経営後継者)自身の成長回路を次の図で説明しています。外側は、(経営後継者)自身の成長回路を表しています。内側は、成長回路を回した結果としての後継者の成長するポイント(自己革新)を表しています。

コラム8作図

第1は、「自己の客観視」です。後継者が自身の現状(興味、能力、価値観)を徹底的に把握することです。理由は、後で説明する「自己概念」を明確化するためです。

具体的には①興味(そもそも自分はどんなことに興味を持ってきたか、職業の適正はどうか、など)、②能力(経験、資格、成果を生み出す力は、何が強くて、何が足を引っ張っているのか、など)③価値観(自分が大切にしていることはなにか)、を後継者が自問自答することです。

第2は、「自己概念の明確化」です。自己概念とは人生に対する意味付けのことです。「自分は何のため生きていくのか、どんな存在になりたいのか」を明確に言葉で表現できるようになることです。理由としては、①目指す方向に迷いがなくなる、②苦難を乗り越える原動力になる、などが挙げられます。キャリアコンサルタントにカウンセリングを依頼することも有効です。

第3は、「後継の意思決定」です。後継者が主体的にゼロベースで人生の選択肢を考え、決断することです。理由は、決意と覚悟を固めるためです。具体的には、複数の承継の選択肢(M&Aも含めて検討)に加えて、承継しない場合の選択肢(会社に勤める、起業する等)も列挙し、メリット、デメリットを検討します。こうして、主体的に意思決定することで、受け身ではない、意志の力による事業承継が可能になります。

第4は、「経営者としての成長」です。ポイントを押さえ短期間で自身の力を高めます。理由は、後継者は、先代の身に何が起ころうとも、いつでも経営できる自分を作っておかねばならないからです。具体的には、会社の成長回路を回しながら、意識、行動、知識の3つのポイントを意識して質の高いPDSサイクル を回し続けることです。

こうして、自身の成長回路を回すことで、自己革新を実現させます。具体的には、意識の面では、自分の自己概念を基盤として、会社を「超友好的に乗っ取るのだ!」という「決意と覚悟のマインド」を持つことです。行動の面では、結果を生み出す「ものの考え方、人との接し方、自分をコントロールする力」を鍛えることです。知識の面では、お金に関する理解、人組織に関する理解、事業に関する知識、統治基盤 に関する知識、マネジメント全般に関する知識など、最低限抑えるべきビジネス知識を体得することです。

以上、第4回(最終回)は、「後継者は経営革新のシナリオを描くべし(自身の成長回路編)」と題し、事業承継の成功のために後継者が「自身の成長回路」をどう回していくべきか?そのヒントをご紹介いたしました。

まとめ

「事業承継の本質と、後継者がやるべきこと」について、全4回に渡ってご紹介させていただきました。世界的な感染症の影響をはじめ、様々な外部環境の変化で多くの中小企業が苦しんでいます。一方で、イノベーションを大胆に進め、社会へ持続的に貢献する企業も数多く存在します。その理由は、先代から引き継いだ「価値あるものを受け取り、価値を生み出す、超友好的な乗っ取り」を実現させている後継者の存在があるからです。事業承継に関わる多くの後継者の方が1日でも早く、今回お伝えした事業承継の本質に気づき、やるべきことを実践していかれることを心から祈念しております。

執筆者プロフィール

川路 隆志(かわじりゅうじ)

(株式会社えんのした/メイツ中国契約講師)

中小企業診断士、経営学修士(MBA)

 

専門は「事業承継における組織活性化」。岡山大学大学院修士課程では、「ミドルマネジャーの管理者行動」を研究。現在は、事業承継、経営革新の礎となる「組織づくり」や「人づくり」を中心に、コンサルティングや研修活動を行っている。

 

所属

株式会社えんのした 代表取締役

一般社団法人軍師アカデミー理事

株式会社後継者の学校顧問

NPO法人岡山NPOセンター顧問

 

Webサイト(http://www.ennoshita.co.jp/