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Vol6 後継者は事業承継の本質に気づくべし

Vol.6

後継者は事業承継の本質に気づくべし

川路 隆志
株式会社えんのした/メイツ中国契約講師

はじめに

第1回目は、「後継者は受け身になりやすいことを自覚すべし」と題して、受け身の後継者が事業承継を失敗に導く点や、後継者が受け身になる理由として特有の立場が関係している点をご紹介いたしました。第2回目は、「後継者は事業承継の本質に気づくべし」と題し、どうすれば後継者が受け身から脱し、事業承継の成功に向けたスタートを切ることができるか?そのヒントをご紹介いたします。。

「事業承継」に対する誤ったイメージが後継者を受け身にする

多くの後継者が受け身から抜け出せない決定的な理由があります。それは、事業承継に対する誤ったイメージを持っている点です。具体的には「事業承継=相続」というイメージです。私は、これまで多くの経営者・後継者と対話してきましたが、事業承継の話となると必ず相続の話が中心に出てきます。

後継者にとって相続とは親の所有する資産(現金や土地、会社の株式など)を譲り受けることですが、これは、すでに静的(価値が決まっているもの)なので本人が「受け身」であろうが「主体的」であろうが、受け取る結果に違いはありません。

一方で、事業とは動的(価値が変化するもの(例えば、ビジネスモデル、人・組織、財務、統治基盤など)なので、受け取る結果が変化します。つまり、受け取る人次第で、会社は成長することもあれば、死んでしまうこともあるのです。

事業承継の本質は相続ではありません。生きた事業そのものです。相続と考えるから受け身になるのです。生き物は受け身で受け取って何もしなければ死んでしまいます。自分が本当に飼うべきなのか、どんな風に育てるのか?主体的に受け取る必要があるのです。この誤ったイメージを払拭し「事業承継の本質」を抑えることが受身から脱却する上で欠かせないのです。

では、後継者が抑えるべき「事業承継の本質」とは何なのでしょうか?

事業承継の本質に気づき、成功に向けたスタートを切ろう!

私が理事として関わっている 一般社団法人軍師アカデミーでは、事業承継の本質を次のように定義しています。事業承継とは、「価値を生み出すために、価値あるものを受け取る、超友好的な乗っ取り」である。

事業承継の目的は後継者が社長になることではありません。価値を生み出し続けることです。社会が必要としている製品サービスを提供し続け、従業員の生活を維持し、税金を払い、利益を再投資して成長することです。そのためには、価値があるものと無いものをしっかり見極めて、価値あるもの(例えば、お客様、従業員、創業以来の歴史、取引先、製品・サービス、建物、お金、ノウハウなど)を受け取るのです。

この受け取ったものをどう作り替えていくか?このシナリオを試行錯誤しながら徹底的に考え抜き、先代に対しても、従業員に対しても、利害関係者全ての人に対して友好的に乗っ取りを仕掛けるのです。このように、乗っ取りに受け身はあり得ません。主体的な行為です。事業承継は「乗っ取り」である。このことに後継者が気づくとき、受身から脱却し、事業承継の成功に向けたスタートを切ることができるのです。

では、事業承継の成功のために、受け身から脱した後継者は具体的に何をすれば良いのでしょうか。その一つ目の答えは、後継者が「会社の成長回路を回す」ことです。詳しくは第3回目で。

まとめ

第2回目の今回は、「後継者は事業承継の本質に気づくべし」と題して、①「事業承継」に対する誤ったイメージが後継者を受け身にしてしまう点、②事業承継の本質に気づくことで、受身から脱し、事業承継の成功に向けたスタートを切ることができる点、についてご紹介いたしました。次回は、「後継者は経営革新のシナリオを描くべし」と題し、事業承継の成功のために後継者が「会社の成長回路」をどう回していくべきか?そのヒントをご紹介いたします。

執筆者プロフィール

川路 隆志(かわじりゅうじ)

(株式会社えんのした/メイツ中国契約講師)

中小企業診断士、経営学修士(MBA)

 

専門は「事業承継における組織活性化」。岡山大学大学院修士課程では、「ミドルマネジャーの管理者行動」を研究。現在は、事業承継、経営革新の礎となる「組織づくり」や「人づくり」を中心に、コンサルティングや研修活動を行っている。

 

所属

株式会社えんのした 代表取締役

一般社団法人軍師アカデミー理事

株式会社後継者の学校顧問

NPO法人岡山NPOセンター顧問