Vol.9
企業の成長のカギとなる中堅社員に求めらる力とは?その1「リーダーシップ」
はじめに
近年、ビジネスの環境は大きく変化をしています。IT技術の進化、市場のグローバル化、社会の期待の変化・多様化など、さまざまな要因が組織に影響を与えています。このような状況下で、組織はより柔軟で適応力のある人材を求めるようになりました。
特に、組織の中核を担う「中堅社員」は、組織のビジョンや戦略を実現するために重要な役割を果たすと言われていますが、「中堅社員」とはどのような人達を言うのでしょうか。
とても定義が広いため一括りにするのは難しいかと思いますが、どの会社でも概ねこのような立ち位置の方を言うのではないかと思います。
『およそ入社5年から15年目位の社員で、実務上の一定の責任や権限を有し、経営層や管理職には属していない社員のこと。』
つまり、組織の中で現場の最前線に立ち、時には若手の手本となりながら、時には管理職や経営層と現場をつなぐパイプとなる。そんな役割を担うのが「中堅社員」だと言えます。企業の成長・発展にとっては非常に重要なポジションであり、かれらのスキル・能力向上が、組織の発展に直結する不可欠な要素であることは言うまでもありません。
中堅社員に求められる能力は様々ありますが、今回はその中でも最も重要なリーダーシップに触れていきたいと思います。以下でリーダーシップの全体像をお伝えし、次にその土台である『人格的要件(人としてのあり方)』について紹介していきます。
リーダーシップの全体像
まず、リーダーシップの全体像を考えてみましょう。
「リーダーシップ」は、ドラッガーをはじめとしたビジネス界の偉人が語るビジネス書、自己啓発書、経営学、組織論に至るまで多岐に亘って定義づけられていますが、概ね以下のように総括できるかと思います。
1.主体的であること
→目的意識を持ち、受け身ではなく、自ら考え、自らの責任で行動をする
2.目標を決め、方向性を定め、メンバーを導くこと
→組織の理念を理解し、ビジョンを持って、仲間と共にミッションを遂行する
3.目標に向かってチャレンジしやすい場をつくること
→メンバーが安心・安全を感じられる環境をつくる(「心理的安全性」と言われます)
4.誠実であり謙虚、周囲から信頼を得ている
→周囲に敬意を持ち、驕らない態度・行動をとり、この人について行っても問題ない、
と思ってもらえる態度・振る舞いを続ける
現在すでにリーダー(経営者・管理職)である人は言うまでもありませんが、リーダーシップは次世代のリーダー候補であったり、現場の最前線にいる中堅社員自身も身に付けておくべき要素だと言えます。
そして、そのリーダーシップを最大限に発揮するためには、上記4つのうちどれか1つが欠けてもいけませんが、4つ目の周囲からの信頼が最も重要なのです。
なぜならば、「信頼」があって初めてその言葉は人の心に届き、心が動かされ、行動につながるからです。「信頼」はリーダーシップの基盤、土台であり、他者を効果的に導くために非常に重要な要素なのです。
それでは、「周囲からの信頼」はどのように獲得すればいいのでしょうか。そのカギが「人格的要件」です。次の段落では、その人格的要件について深堀をしていきたいと思います。
リーダーシップ発揮に最も重要な「人格的要件」とは?
「人格的要件」をもう少し簡単な言葉で表すと、この人は信頼できる、この人について行って間違いない、と思ってもらえるために必要な振る舞いや態度の事です。
例えば・・・
嘘をつかない、人の話を最後まで聞く、陰口を言わない、失敗を周囲のせいにしない、誠実である、自分で決めたことを最後までやり切る。などが挙げられます。誠実さ、謙虚さ、一貫性、責任感、倫理観と言い換えることもできますね。
どれも当たり前のことだと思われるかもしれませんが、周囲から信頼を獲得している人を想像した時、いずれの要素も兼ね備えているはずです。
分かりやすいように、逆を考えてみましょう。
以下のような中堅社員がいて、後輩を指導しているシーンをイメージしてみてください。
いつも誰かの悪口。時間に遅れる。ミスをしてもすぐに人のせいにする。上手くいかないと言い訳ばかり。決めたことをやり切らない。そんな中堅社員がいたとします。
そんな中堅社員が、メンバーに対して『人生は1回きりだから、もっと頑張ろうぜ!!』とあるべき姿を語り、目標に向けてメンバーを導こうとしたとします。そして、本で読んだコーチングのスキルを使ったりして『ここをもっと上手くやろうとしたら、何を変えたら上手くできると思う?』なんて質問をするのです。するとメンバーはどのように感じるでしょうか。
「・・・はぁ?知らんし。」
と、心の中ではそっぽを向いてしまうのではないでしょうか。
他にも、この中堅社員が複数のメンバーをまとめながら会議を上手く進めたり、周囲を巻き込み問題解決を推進していくことは難しいのではないかと思います。
仕事で高い成果を出すためには様々な能力が求められ、特に重要な要素がリーダーシップであるという事は言うまでもありません。しかし、そのリーダーシップを下支えするのは、その人の日ごろの態度や振る舞いの積み重ね、つまり「人としてどうあるか」がとても重要なのです。
周囲の人が、日ごろの態度・振る舞いを見て、この人は信頼できる、この人について行って間違いない、と思ってもらえて初めて、そのリーダーシップはしっかりと機能すると言えます。
これを「人格的要件」と言います。
まとめ
中堅社員に求められるリーダーシップは、組織の成功に直結する重要な要素です。
そして、リーダーシップを発揮するためには、周囲から信頼されることが最も重要であり、信頼を得るためには、嘘をつかない、人の話を最後まで聞く、陰口を言わない、失敗を周囲のせいにしない、誠実である、自分で決めたことを最後までやり切るといった、誠実さ、謙虚さ、一貫性、責任感、倫理観などの「人格的要件」が不可欠です。
これらの要素を兼ね備えることで、中堅社員は組織内でリーダーシップを効果的に発揮し、他者を導く存在となることができます。
一方で、業務遂行に必要な技術やスキルが足らなくても良いというわけではありません。技術・知識・スキルは同様に重要です。もし技術・スキル・知識が全くなくて人格が優れている中堅社員がいたとしても、それはただのイイ人であり、信頼を獲得することはもちろん、メンバーを目標へ導くことや組織を発展させることは出来ないでしょう。
「人格的要件」と「業務遂行における知識・技術」は同じくらい重要で、バランスよく身に付けなければならない要素なのです。
信頼を築き、優れたリーダーとなるためには、日々の行動や態度において「人格的要件」を磨き、同時に業務の知識や技術を高めるための研鑽がとても重要だと言えます。